Kimono remake

深く切り込みを入れたフロントデザインが特徴のプルオーバー。それ以外は何も加えないミニマムが際立つ一着。「鮫小紋」着物からのリメイクのご紹介です。

ご依頼主のお母様が所有し一度も袖を通さず箪笥に眠っていた着物。ご依頼主は独特な色、素材、柄、着物特有の素材に惹かれ、これを洋服にして着たいと思いリメイクの依頼をくださいました。この素敵なデザインはご依頼主自らイメージのご提案くださいました。

ノーカラーから返る見返し部分、袖口見返しは着物の裏地(白)を採用。絹特有の光沢は品格があり、このデザインになんとも言えない美しさを加えて引き立て役になっています。

何も加えない、極めてシンプルなプルオーバーはコンテンポラリーな印象、しかしそれを作り上げる素材はクラシカルな着物から成り立っています。相反するものでありながら出来あがりは違和感はなく、独特のモダン性が感じられる仕上がりになりました。



着物について。

小紋三役と呼ばれた「鮫」「通し」「行儀」。その代表の一つの「鮫小紋」この鮫小紋について調べていくととても興味深いです。江戸小紋がなぜ、どの時代、その時代の背景、さらには人々の衣服への感情がいかにしてこの江戸小紋が生まれたかを知ることができました。型紙彫刻の中でも古い技法であること、精密な円が型紙の中でどのように配置するか、円の緩やかさはとても高い職人技と感性から成り立つこと。

なぜ「鮫」の謎。

鮫の皮(鱗)はその昔、どの皮よりも厚く硬いと信じられており、厄除けや魔除けの意味が込められるそうです。徳川家武士が戦で使った鎧兜が鮫のウロコのように固く、身を護ったとして、鮫のうろこの文様を身に付けたのが始まりとされているそうです。

ご依頼いただいた着物からこうして時代背景、技術、込められた願いなどを知るきっかけをいただきました。知る事は本当に楽しい、その物を見ながら思いを馳せ、想像し心が膨らむ。とてもありがたく嬉しくなる出来事です。


何も加えない、コンテンポラリーでシンプルなプルオーバー。しかしそれを作り上げる素材はクラシカルな「着物」から成り立っています。相反するものでありながら出来あがりには違和感はなく、独特のモダン性が感じられる仕上がりになりました。

スタイリングには大きなエネルギーを与えてくれた装身具。これはモデルもしてくださった彼女が手掛けられているブランド「TE to ME」の作品です。身体や衣服につける装身具、それは単に魅力的に見せる為だけには終わらせず、身に着けた人、またそれを見た人までもが惹きつけられる格別な存在となります。大きなエネルギーをありがとうございました!

さて、ご依頼主は一体どのようなスタイリングでこのプルオーバーを楽しんでくださるでしょうか。とても楽しみで仕方ないです。またこちらでご紹介させていただきますね。どうぞお楽しみに!


atelier rei

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