Room separated by cloth

築47年(1974年)低層住居専用地域、閑静な住宅地にヴィンテージマンションと呼ぶにふさわしいマンション。築年数は古くても管理体制もよく、何よりも先進的で個性的なデザインながらシンプルでモダンな美しいデザインは現代では珍しい、あるいは、時代を感じさせない優れたデザイン性が人々の心を惹き付ける要因かもしれません。私はドライブ中には建物探索が楽しみの一つであり、このマンションもその1軒で興味津々でした。今回ご縁があり、憧れのマンションでのリノベーションをされる方からの空間作りのご依頼をいただきました。

約100㎡の空間。空間を全て見渡せる設計デザイン。この空間では施主様家族の居住空間、ワークスペース、お子様のスペース、多目的スペースなどフレキシブルに対応できる空間設計です。住むこと、暮らすこと、働くこと、この空間で共に感じ成長すること、無限の可能性が秘めています。建築家である施主様は何よりもその奥深さと在り方を信念としてお持ちでいらっしゃいます。ご自身で設計されるこだわりのあるリノベーションが始まりました。

スペースの区切りとして、「しっかりとした木材で壁建てした箱」と「ソフトな素材で壁建てした箱」この2つの箱を空間に取り組む構成です。「ソフトな素材の箱」の製作依頼をいただきました。

一般的に使用されるカーテン素材から資材用途に使われる素材まで広範囲で素材のセレクトを始めました。空間内にステンレス扉を用いているなどのキーワードを集め、使用する素材は<メタリック素材>に決定しました。

<メタリック素材>

壁から突き出すように「コの字」の仕切り壁を布で仕立てます。3面構成、それぞれ異なる<メタリック素材>を組み合わせるアイデアが施主様と生まれ、その切り替えの位置は施主様自身からプロの目でイレギュラーな位置設定をされました。単純に正面、右、左の角ではなく角を超える位置の素材の切り替えは単一でなく、見えない奥の想像を膨らませます。空間創造を勉強させていただきました。空間作りが面白くなります。

<布の仕組み>

天井から吊り下げ用棒(19mm角ステンレス)のぶら下げ仕様。棒通し口用のステッチダウンは表面から見えない。「ステッチダウンが見えない」この些細なことが重要なディテールポイントです。ステッチダウンが見えることは棒に吊り下げられている仕組みが分かり、単純に当たり前のように設えられた感覚を受けそれ以上にはなりえません。今回施主様からこのステッチダウン無しディテールを受けた時に、施主様の感覚や物の捉え方こだわりに賛同し、見つめる事への深さを感じ、それを実現化していきたいと胸が高鳴りました。

<裾の納め方>

吊り下げから床面+10cmで仕上げました。3種類の異なる素材の特性上、床上がりの裾ラインの収まりがまばらになり綺麗ではないとの判断からです。床から10cm長くなった裾は内側に流し、目指す「箱」感として面白く現われました。


布で仕切られた部屋は、遊牧民のパオやキャンパーのテントのようなイメージからの派生です。生活の中で快適や便利を追求するばかりではなく、少々手間のかかる設えが必要になりますが、それもきっと気分によって向き合うこと、暮らすことになるのかもしれません。自由度のある空間をお楽しみください。

どうぞご参考にしてみてください。

<素材>

正面:シルバーメタリック(裏打ち布はコットン、ライトグレー)

右面:メタリック合成レザー(裏打ち布はコットン、ライトグレー)

左面:ナイロン(裏打ち布は表と同素材)

atelier rei

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